2012年5月3日木曜日

大阪市・家庭教育支援条例(案)に強く反対の意を表明する

「大阪維新の会(代表・橋下徹大阪市長)大阪市議団は1日、保護者に家庭教育の学習機会を提供する「家庭教育支援条例案」を、15日開会の5月定例議会に議員提案する方針を固めた。
児童虐待や、無理難題を強いる「モンスターペアレント」の出現を防ぐ狙いで、成立すれば全国でも異例の条例となる。
市議会で審議中の教育基本2条例案に盛り込まれた保護者向け家庭教育支援を具体化する内容。「親になる心の準備のないまま子どもに接し、途方に暮 れる父母が増えている」とし、具体的には市内の全保育園・幼稚園に保護者を対象とした一日保育士・幼稚園教諭体験の機会を設けるよう義務化。結婚や子育て の意義を記した家庭用道徳副読本を高校生以下の子どものいる全世帯に配布するほか、市長直轄の推進本部を設置し、「家庭教育推進計画」を策定することも盛 り込んだ。」(YOMIURI ONLINEより抜粋)

下記URLが条例案である。
http://osakanet.web.fc2.com/kateikyoiku.html#4

この条例案を目にした時、すぐにベッテルハイムの「冷蔵庫マザー説」が浮かんだ。
自閉症の暗い歴史の一つとして、1940年代にベッテルハイムが提唱した「自閉的な行動は母の冷淡な態度による」という「冷蔵庫マザー」説が広まった。こ れにより自閉症の子をもつ多くの母親は傷つき、自責の念、罪悪感にかられていた。この歴史を日本は今、繰り返そうとしている。

当時のアメリカでは自閉症の「冷蔵庫マザー説」に基づき、多くの自閉症児が母から引き離された。絶対受容を前提として治療施設に入所、親も強制的にセラピーを受けることに。結果こどもたちにおいては青年期~成人期において社会適応を一層困難にさせた。結局母子分離は全く効果がなかったことを歴史が証明している。

レオ・カナーが、親の行動が自閉症につながるという発言をしていることから、冷蔵庫マザー説は強固なものになっていた。日本でも、杉山登志郎氏が「第4の 発達障害」というセンセーショナルなタイトルの著書を出版し、虐待を初めとする不適切な養育が発達障害を引き起こす、という誤解が広まった。

カナーも杉山氏も、自閉症を中心とする発達障害は母の養育態度が原因ではないことを述べている(カナーは自説をひっくり返しただけだが)にもかかわらず、誤解釈だけがあっという間に広まった。歴史は繰り返す、というがこんな繰り返しはあんまりだ。

ADHDにおいても暗い歴史がある。1900年頃には「モラルの欠如」と決め付けられ親は責められた。その後は中枢刺激薬が奏功することがわかり、脳に何 らかの異常があるだろうという仮説が提唱された。しかし、アメリカではリタリン乱用、人種差別問題にしばしばADHDが引き合いに出されていた。

自閉症スペクトラムでもADHDでも、その概念確立までには非常に暗い歴史が背景にあることを知ってほしい。多くの苦労があって少しづつ誤解と偏見が解かれつつある、それでもまだまだ啓発理解には不十分と感じるところに、今回の条例案・・・。

今はただ、憤りしか感じられない。条例という法的権力によって、今までのつらく苦しくとも歩み進ませてきたところから、振り出しに戻そうとしているだけだ。

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